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どうしようもないネタメモブログ。 ツッコミ可。空月のツッコミ返し有。 原稿とかで忙しい時はこっちで更新してます。
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血色の良い肌に白を乗せると、栄純は面白そうに笑った。
頬から額に指を滑らせながら、どうしたのかと問う。何でも、ただ妙だなって、と栄純は答えて目を閉じる。白粉を塗っただけなのに陶器のように触れ難くなった。もっと薄い化粧にした方がいいだろうかと指は化粧箱の上空を逡巡したが、結局次の工程に進む。
華奢な手が眉筆を取り、栄純の顔に運ぶ。
「なあ、春っち」
「うーん…?」
化粧に集中している春市は、呼び声に半分上の空で返した。
部屋に面した庭でひばりが甲高い声で鳴く。春の日差しが穏やかに降り注ぎ、栄純はうっとりして笑った。
「平和だなぁ…」
「うーん…」
目を開けると春市の眉間には皺が寄っている。余程集中しているのだろう。
普段は前髪に隠れている瞳が至近距離ではっきり見える。黒なのに栄純の真っ黒な瞳とは違う、透き通ったような不思議な色。褒めると恥ずかしそうにはぐらかされるが、栄純は彼の目が好きだ。
「結婚かー」
「うん…」
やっぱり気のない声音のまま両の眉を描き終え、春市はふうと息をついた。疲れた?と視線で問いかけてくる栄純に、返事代わりに微笑む。
最後に手にしたのは紅の入った貝殻だった。蛤の殻を開けると新品の真っ赤な紅がお目見えする。滑らかな赤が妖艶に光った。
躊躇いがちに人差し指で掬うと、栄純の唇へ。
けれども栄純の手がそれを制した。
「え?」
「春っち」
視線を滑らせて見た栄純の瞳は、黒曜石のよう――とでも形容すればよいのだろうか、艶めいて美しい。ただ春市は黒曜石など見たことがなかったから、それは単なる想像に過ぎなかった。
黒い双貌が細められて瞬間栄純の顔が目の前にきたと思ったら口づけられていた。
驚いて目を見開いた春市とは対照的に、栄純は静かに目を閉じる。瞼にも乗った白が映える。
春市もつられるように目を閉じ、触れるだけの口づけを深くしてゆく。ほんの少しだけ唇に震えが走り、栄純は大人しく受け入れる。
「ん…」
「ふ、あぅ…」
唇をはんで舌を絡めてぐっと吸い上げる。目を瞑っていても、栄純が気持ちよく感じているのが伝わってくる。
ゆっくり解放すると、二人の間を銀糸が結んでいた。
息をついた栄純は銀糸伝いに春市を見、悪戯っぽく笑う。
「春っち上手だ」
「…栄純くん」
「俺、下手だったから」
銀糸が力無く畳に落ちた。栄純はそれを寂しそうに見て、春市の膝元に落ちた蛤を拾い上げる。
春市に差し出し、笑んだ。
「塗って」
「……」
春市の手が伸びてきたのを満足気に見て取って、栄純は口を開く。
「思えばさ。口吸いだけじゃなくて、気の利いた会話もちょっとした気配りも、いつだって春っちの方が上だったのに」
「そうでもないよ」
「そっか?よく二人で練習したよな」
栄純と春市がこの男娼宿に連れて来られたのはそれぞれの家の事情で、幼い二人には知る由もない。
だが、結局は口べらしのために違いなかった。
二人は長男ではなく、身体も小柄であったため大して育たないだろうと農家から追い出された。よくある話だったので、誰も同情する者などいなかった。否――そんな余地など、無かったのだ。
栄純と春市が初めて会ったのは宿に連れられていく少年の集団の中で、たまたま隣になった時のこと。峠越えをしなければならず、酷い雪の中ただひたすら歩いた。
年が同じの二人は共に男娼の手ほどきを受けた。何でもすぐに上達する春市と何時までも口吸いひとつ上手く出来ない栄純は、優等生と落第生のようであった。けれど二人は仲が良く、客の品定めをしだり男の相手の練習をしたりと、子どもらしからぬ遊びをして楽しんでいた。
何時だって一緒。病気にでもならない限り此処で二人で生きていくのだと、信じていた。
春市の震える指がもう一度紅を掬い上げ、栄純の口へ持って行く。
柔らかな唇に鮮やかな赤は目に痛いほどだが、不思議とよく似合った。
赤い唇、黒い眉、白い顔、白い着物――白無垢。
死に装束でないだけましであるなど、誰が言うのだろう。
春市が化粧の出来を確かめ頷くのを見て取って、栄純は赤い口角を上げた。
「これで、本当に俺の唇に触れられるのは、春っちだけだ」
「……え?」
片目を閉じ、おどけて見せながら。
「紅の下に封印したよ。いくら他の奴が触れても、紅が取れても、春っちとした口づけが下にあるから」
さっきの突然の口づけはそういうことかと春市は瞬きした。
ずっと一緒だったこの少年は、男娼としては珍しく正式に嫁として迎え入れられることになった。今の時代金持ちなら一定の常識など覆せるらしい。相手は常連客の一人で、栄純を大層気に入ったのだとか。
そうなれば栄純自身の意志など無いに等しく、すぐにこうやって婚礼の準備が始まったのだった。
お付きとして傍にいる道を断った春市に栄純は何も言わなかった。今は可愛らしい少年だからこそ愛されもするが、歳を経れば捨てられるかもしれない。此処に残ったところで変わらないとしても、没落する惨めな姿を大事な親友に見られるのはちょっと嫌だった。
庭でひばりがまた鳴いた。雪が溶けた春の景色はのどかで眠くなる。
思わず出かけた欠伸を噛み殺して、栄純はふにゃりと笑った。
「あの人はきっと俺を大事にしてくれるから、大丈夫だ、春っち」
「……栄純くん」
「うん?」
そう言えば自分ばかり話していたかもなと栄純は思って相槌を打った。
春市の瞳が真っ直ぐ栄純を射るのに驚く。
「俺、栄純くんに一つ嘘を」
「え?」
「最近さ…最近って言ってもここ二年くらい」
「二年…?」
「うん。この二年、俺、誰とも寝てない」
栄純の黒い瞳が大きく見開かれた。まさか、と言いたくて、けれど空気が上手く音にならない。
ただ口をぱくぱく開閉する栄純に、春市はくすっと笑った。
「俺さ、もともと抱かれるの下手で」
「え…で、でも、客は取ってただろ!?」
「もちろん。俺の常連は事情を知ってる客ばかりだったし…『春の奴は話も芸も巧いが絶対抱かせない』ってね」
あっけらかんと言ってみせる春市に、栄純は言葉もない。悔しいとかずるいとかそんな言葉は思い浮かばず、むしろすごいと感心すらしていた。
「別に仕事だからさ、抱かれるのが嫌だとかは無いんだけど、あっちが嫌がるんだ」
春市はため息をつく。
「抱かれてても俺、泣きもしないし喚きもしないし…何か心此処に在らずなんだって」
「へ…」
春市はその上達ぶりから栄純より床入りが早かった。彼が抱かれているのを見たことはない――が、勉強だと先輩に聞きにいかされたことはある。
荒い息遣いはしたけれど至って静かで、痛いと聞かされていたのは嘘かとほっと胸をなで下ろし、初めての時泣き喚いて散々だったのを思い出した。春市との差を思って情けなくなったのを覚えている。
庭のししおどしがかこんと鳴った。
春市が栄純の手を掴んだのはほぼ同時だった。
「誰か別の人のことを考えてる顔だって」
呆気に取られた顔の栄純に、春市は優しく微笑みかける。栄純の綺麗な瞳が今にも泣きそうに歪んでいた。
ずっとそばにいたかった。泣くのも笑うのも一緒だと幸せだった。
こんなこと言ったら栄純は怒る。でも、死ぬ時だって一緒がよかった。
「抱かれてる時ね、栄純くんは今どうしてるんだろうって思ってた。栄純くんはどんなふうに抱かれてるんだろうとか、栄純くんはどんな気持ちでいるんだろうとか、栄純くんは…」
白粉落ちちゃうよ、と春市が苦笑しても、栄純は涙を止められなかった。
「栄純くんは…俺のこと考えてるかなって」
「…ッ!」
「栄純くん」
きゅ、と小さな両手を握りしめる。
透明な双貌が強く栄純を映す。
「一緒に、逃げよう」
何処まで行けるかわからない。
それでも、誰より大切な人が一緒にいてくれるならば、どこへだって行ける。
春市は笑った。

「俺のものになってください」

「うっ…あぅっ…」
「栄純くん、その…」
泣きじゃくる栄純をなだめながら、春市は不安そうに眉をハの字にした。
「返事、は」
栄純は春市の着物にしがみつき、嗚咽を漏らしながら首を激しく縦に振った。
「は、春っち、の」
「え?」
栄純は涙でぐちゃぐちゃの顔を上向けて、にっこり笑った。
「春っちの、ものに、してください」
頬に当てられた手は熱くて、栄純は目を閉じた。
春市はそんな姿が愛しくて抱きしめたくなる衝動を抑えて、自分も目を閉じ、紅のとれかけた唇に口づけた。


ひばりが鳴く声がして、春を呼び起こす。
ああそう言えば。春市は白い着物に手をかけて苦笑した。
此処に峠を越えてくる時、雪など降っていなかった。よく考えずとも、春市の住んでいた地域は雪など降らない。
それは栄純が話してくれた、栄純の記憶。
「栄純くん」
「ん…」
「何でもないよ」
耳元で囁くとくすぐったそうに身をよじる。
外に溢れる春を目一杯浴びながら、二人は緩やかに重なった。





遊郭パラレルの必要性に疑問を感じたため、男娼にしてみた。その心意気だけ買って下さい。←
春市は青道一男前です。


白い雪は、溶けたのです。
永久に、溶けたのです。
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「クリス先輩っ!」
「どうした、沢村」
「『萌え』って、何すか!?」
「……は?」
「御幸のヤローが俺に良く言うんです。どういう意味なんですか?」
「御幸……」(頭を抱える)
「?」
「それはな沢村…『今のは良くなかった』ということだ」
「良くなかった?」
「ああ。だから御幸にそう言われたら、その時したことは御幸の前では二度とするなよ」
「なるほど…!わかりやしたっ、ありがとうございます!」
『これでよし、と…』


他の人に聞くver.も作ろうかな.誰がいいですか?キャプ?(笑)
久しぶりに会った三橋は少し痩せたような気がした。
指摘すると筋肉がついて締まっただけだとムキになる。いやいやあれ以上細くなりようがないだろと反論し、それでは議論が本末転倒してしまうのに気づいて口を噤んだ。
訪れた沈黙に慌てた三橋は、目を泳がせて会話の糸口を探した。
「修ちゃん、あの、ね」
三橋の口から出るのは「今」で、絶対に過去じゃない。過去の延長にある今でもない。
絶対的に、「今」なのだ。叶の知らない、今。
知るために言葉というものが存在するのだが、次々に繰り出される知らないものに、叶の頭はついていくことが出来なくなる。ただ頷いて、一緒になって喜んでやることくらいしか、叶にはなす術がない。
でも、それは自分だって同じなはずだ。幼なじみは死ぬまで幼なじみだが、「今」の共有者じゃなくたっていい。
「良かったな、廉」
そう言って笑ってやれば、ほら。三橋は嬉しいのだから。
「修、ちゃん?」
「…ん、」
「ど、うか、したの?」
「――ちょっと、な」


その笑顔が歪んで見えるのは多分、事実半分、やっかみ半分に、違いない。


綺麗に歪んだ顔で笑う
カノミハ
(笑顔より泣き顔の方がまっすぐだ)


お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
十年後


「雲雀さんて、結構目立ちたがりですよね」
突然言われて面食らった雲雀は、ええ何を言ってるわけ綱吉、と綺麗な顔で美しく笑った。
笑顔の方が余程怖いというのはこのこと。綱吉は慌てて手元の書類に視線を落とす。
「綱吉」
デスク、綱吉の顔のすぐ横に突き刺さったトンファーがいやに黒光りする。
彼が本気でないことくらい心得ているが、慣れないものは慣れないし怖いものは怖い。
綱吉はホールドアップしながら身を引くと、楽しそうにこちらを見やる雲雀に苦笑して見せた。
「雲雀さん、これ高かったんですよー…」
「高かったらしい、でしょ。自分で買った訳じゃないだろうに」
確かにそのオーク材のデスクは仕事の付き合いで部下が手配して買ったものだったが、相変わらず手厳しいと綱吉は乾いた笑い声を上げた。
綱吉はボンゴレのボスだが、本当に必要な時以外は外に出ることを許されていない。理由は簡単、暗殺されるからだ。
昔からマフィア間の抗争などざらにあったが、最近は兵器の進化や術の開発が続き、マフィアの在り方自体が変化してきている。シチリア最大のボンゴレファミリーも余談が許されぬ状況である。
一つひとつの取引への神経が過敏になっていることもあり、綱吉も主要なもの以外は部下に任せていた。万が一の時のためにも精神面をやられるのはとにかく避けねばならない。
「まあ、別に何でもいいや」
雲雀はデスクに突き刺さったトンファーを引き抜く。木が軋み割れる音が響いたが気にせず、彼は綱吉へ背を向けた。
「あ、雲雀さ…」
「明日にでもナポリに渡るよ。これで今回の抗争は終わりだ」
客観的意見を述べたまでだった。もしくは一般的な見解を。
綱吉はホールドアップしていた両手を静かに下げて、しっかり頷いた。
「はい。ありがとうございます」
これから他人の命を奪いに行く人間に対してはあまりに不釣り合いだと、雲雀は思った。



血の雨。味方の血か敵の血か区別がつかない。
そして味方も敵も無いに等しかった。
雲雀はトンファーで向かってくるもの全てをなぎ倒し駆ける。
『雲雀さんて、結構目立ちたがりですよね』
常に前線に出ることを望む彼の率直な印象。
(あながち間違っちゃいない)
拳銃。剣。毒。薬。爆弾。
破裂し四散し集束し消滅する。
その繰り返しが頭の中ループし、時間感覚を追い込む。
戦いは雲雀の生きる舞台だ。この感覚が感じられなくなった時、自分は死ぬかもしれないとさえ思う。
(でも綱吉。目立ちたがりは他の奴らだって同じだろう)
特に守護者は皆、綱吉を守ろうと我先にと飛び出して、豪快に一掃してみせるのがお得意だ。
そう、誰だって綱吉に、血を見せたくはない。
それは単なる偽善だが、ボスに忠義ではない感情を寄せる彼等にとってはどうでもいいことだった。
雲雀は最後の一人を地に伏した。死んではいないかもしれないが当分動けないだろうし、最早ボンゴレ雲の守護者に向かってくる無謀な者などいはしない。
黒々としたナポリの空を見上げる。自身の黒い髪の間に見える夜空は、黒の幕のようにただただ黒かった。
「綱吉――」
真っ先に前線に向かうのも。ボンゴレの象徴のように目立とうとするのも。
『はい。ありがとうございます』
血を目一杯浴びた彼は、肉食獣のように吠えた。
泣いたようにも笑ったようにも響いたそれは、黒の空に包み込まれ、飲み込まれた。


君の不幸は全て僕に降ればいい
ヒバツナ
(一滴遺らず)


お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
キャッチキャッチと喚いて後ろをついてくるのは日常茶飯事。
滅多にない休みに部屋に押しかけてくるのにも、他のピッチャーの相手をしているのを羨ましそうに見つめてくるのにも慣れてしまった。
先輩の自分にだけタメ口で、馴れ馴れしいと思ったら妙によそよそしくて。
はっきり言って、面倒なだけのはず、だったんだけど。
「沢村」
「んむ?」
「ほら、こっち向けって。な」
「……」
うす、と小さく言って顔を向ける栄純に、御幸は自身をせせら笑うしかない。
(馬鹿な俺)
一人に固執したら良いキャッチャーでいられなくなるかもしれない。なのに、このたった一人のピッチャーを手放せなくなるとは、扇の要が聞いて呆れるというものだ。
(大好きだよ、沢村)
だが、もし。もしも。
「沢村」
「…何だよ?」
小さく笑って、何でもないと笑った。
恋に落ちた後の祭りなら、いくら痛くても耐えられるかもしれない。



嫌いになれたらよかった
御沢
(無理だってわかってるから言える。俺ってこんな臆病だっけ?)


お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
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