どうしようもないネタメモブログ。
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三星×三橋本試し読み。
★★★一回裏スリーアウト★★★
部室棟の裏手。普段は用務員でさえ滅多に訪れない雑草だらけのその場所で、部室棟の壁に向かって小さな背中が蹲っている。
時折漏れる嗚咽と震える肩から、その人物が泣いているのは一目瞭然だった。
運動着と思われる泥の跳ねた白い上下を身に纏い、膝を抱くようにして声を噛み殺して泣いている彼は、小柄で細身の身体と薄い色の髪だけ見ると女の子ようでもあった。けれど彼は確かに男である。
彼はただただ何をするでもなくその場に留まり泣く。まるで泣くことが目的のようだったが、実際は泣きたいのではなかった。彼がしたいのは反省と自己嫌悪の狭間のようなもので、それで何かが許されるとは思っていなかったけれど、自分にはそれしか出来ないと思い込んでいたから今は泣く。
がさ、と木の葉が音を立てた。泣き出してから三分も経っていない。
瞬間彼は小刻みに震わせていた拳を握り締め、泣き顔を引き攣らせた。何が来るか彼にはよくわかっていたのだ。
がさがさという葉擦れの音が急激に大きくなってゆく。近づいてくる証拠だ。見つかってしまった。
衝撃に耐えるため両拳を握り締め、歯を食いしばった。
「三橋!こんなとこにいたのか!?」
「うっ…!」
突然頭上から降ってきた大音量の怒号に三橋廉は肩を縮こませた。見なくても声で誰だかわかっていたが、機嫌を損ねないように遠慮がちに振り向き、見上げる。
そこには彼の相棒であるキャッチャー、畠篤史の姿があった。
畠は見るからに怒っていた。目が座っているし、鼻筋あたりがひくついている。握った拳は三橋のそれより一回りも大きく、殴られでもしたら頭が陥没してしまいそうである。
そしてその大きな声。低くよく通る声は、三キロ先からでも三橋には聞き取れそうなほど威力があって、キャッチャーとしては申し分ないであろうが、だからこそ三橋は今ぶるぶる震えるのを隠そうともせず脅えている。
とどのつまり、三橋は畠が苦手だった。
畠が一歩、三橋に近づく。その距離後二メートル強。三橋が無意識に壁に縋り付いた。
もう一歩、近づく。後一メートル弱。三橋はもっと壁に縋り付き、もうこの際壁と一体化したいとまで思って半泣き状態になった。
「うっ…ひぐっ…」
「…っ、」
畠は強く歯を噛み締めた後、息を吸って大音量とともに吐き出した。バックに炎を背負っている。
「お前いつの間にかいなくなってんじゃねー!」
「ごっ…めんなさ…」
「試合の最後の挨拶の前に逃げ出す馬鹿がどこにいんだ、ええ!?」
「あ、で、でも…」
「でももクソもあるか!お前一応うちのピッチャーなんだからしっかりしろよ!」
「は、はぃ…」
「声が小さいぃ!」
「はっ…ハイイイイ!!」
三橋は両目から大粒の涙を振り撒きつつ、必死に頭を縦に振った。頭が取れそうだ。
大きく息をつきながら畠はおう、と頷く。今日はまだ声が言語を形成しているだけだいぶマシだと自分に言い聞かせる。
酷いときはこれが会話にすらならないことがあり、そんなとき畠は本当に三橋を殴りそうになったりするのだ。いや、実際殴ったこともある。しかし妙なところで運がいいというか何というか、そのようなとき三橋は腰が抜けたり転びかけたり倒れたりして何故か畠の拳を受けたことはなかった。その度逆に畠が力の行き場を失って転んだり何かに衝突したりしたので、嫌な思い出である。
その内畠も、三橋に暴力は振るうだけ無駄ということにようやく気づいたのだが、それはともかく。
畠はため息と共に頭を掻こうとし、まだ防具を取っていなかったことに気づいた。舌打ちをしつつ防具類を取りながら、ぶつぶつ言う。
「まったくお前はいつも『そう』なんだからな…」
「ご、ごめ、ごめなさ、」
「お前、敵前逃亡って言葉知ってるか?負けてもあれじゃ同じことだろーが」
「うぅ…」
とりま、ここまで。
★★★一回裏スリーアウト★★★
部室棟の裏手。普段は用務員でさえ滅多に訪れない雑草だらけのその場所で、部室棟の壁に向かって小さな背中が蹲っている。
時折漏れる嗚咽と震える肩から、その人物が泣いているのは一目瞭然だった。
運動着と思われる泥の跳ねた白い上下を身に纏い、膝を抱くようにして声を噛み殺して泣いている彼は、小柄で細身の身体と薄い色の髪だけ見ると女の子ようでもあった。けれど彼は確かに男である。
彼はただただ何をするでもなくその場に留まり泣く。まるで泣くことが目的のようだったが、実際は泣きたいのではなかった。彼がしたいのは反省と自己嫌悪の狭間のようなもので、それで何かが許されるとは思っていなかったけれど、自分にはそれしか出来ないと思い込んでいたから今は泣く。
がさ、と木の葉が音を立てた。泣き出してから三分も経っていない。
瞬間彼は小刻みに震わせていた拳を握り締め、泣き顔を引き攣らせた。何が来るか彼にはよくわかっていたのだ。
がさがさという葉擦れの音が急激に大きくなってゆく。近づいてくる証拠だ。見つかってしまった。
衝撃に耐えるため両拳を握り締め、歯を食いしばった。
「三橋!こんなとこにいたのか!?」
「うっ…!」
突然頭上から降ってきた大音量の怒号に三橋廉は肩を縮こませた。見なくても声で誰だかわかっていたが、機嫌を損ねないように遠慮がちに振り向き、見上げる。
そこには彼の相棒であるキャッチャー、畠篤史の姿があった。
畠は見るからに怒っていた。目が座っているし、鼻筋あたりがひくついている。握った拳は三橋のそれより一回りも大きく、殴られでもしたら頭が陥没してしまいそうである。
そしてその大きな声。低くよく通る声は、三キロ先からでも三橋には聞き取れそうなほど威力があって、キャッチャーとしては申し分ないであろうが、だからこそ三橋は今ぶるぶる震えるのを隠そうともせず脅えている。
とどのつまり、三橋は畠が苦手だった。
畠が一歩、三橋に近づく。その距離後二メートル強。三橋が無意識に壁に縋り付いた。
もう一歩、近づく。後一メートル弱。三橋はもっと壁に縋り付き、もうこの際壁と一体化したいとまで思って半泣き状態になった。
「うっ…ひぐっ…」
「…っ、」
畠は強く歯を噛み締めた後、息を吸って大音量とともに吐き出した。バックに炎を背負っている。
「お前いつの間にかいなくなってんじゃねー!」
「ごっ…めんなさ…」
「試合の最後の挨拶の前に逃げ出す馬鹿がどこにいんだ、ええ!?」
「あ、で、でも…」
「でももクソもあるか!お前一応うちのピッチャーなんだからしっかりしろよ!」
「は、はぃ…」
「声が小さいぃ!」
「はっ…ハイイイイ!!」
三橋は両目から大粒の涙を振り撒きつつ、必死に頭を縦に振った。頭が取れそうだ。
大きく息をつきながら畠はおう、と頷く。今日はまだ声が言語を形成しているだけだいぶマシだと自分に言い聞かせる。
酷いときはこれが会話にすらならないことがあり、そんなとき畠は本当に三橋を殴りそうになったりするのだ。いや、実際殴ったこともある。しかし妙なところで運がいいというか何というか、そのようなとき三橋は腰が抜けたり転びかけたり倒れたりして何故か畠の拳を受けたことはなかった。その度逆に畠が力の行き場を失って転んだり何かに衝突したりしたので、嫌な思い出である。
その内畠も、三橋に暴力は振るうだけ無駄ということにようやく気づいたのだが、それはともかく。
畠はため息と共に頭を掻こうとし、まだ防具を取っていなかったことに気づいた。舌打ちをしつつ防具類を取りながら、ぶつぶつ言う。
「まったくお前はいつも『そう』なんだからな…」
「ご、ごめ、ごめなさ、」
「お前、敵前逃亡って言葉知ってるか?負けてもあれじゃ同じことだろーが」
「うぅ…」
とりま、ここまで。
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