どうしようもないネタメモブログ。
ツッコミ可。空月のツッコミ返し有。
原稿とかで忙しい時はこっちで更新してます。
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泣くなよ。
怒んなよ。
笑うなよ。
ときどき物凄く、痛ましく、苦しい。つらい。
全部さびしいから。お前は太陽なのに、冷たい風に、なるのが。
あったかくてむしろすごく熱いから、ほんの少しの冷たさが、映える。決して相容れないのにお前は両方だから、可笑しい。
太陽なんだろ?北風じゃ、ないんだろ?
お前の目指してたものは。
(むかしむかしあるところに、旅人と、太陽と、北風が)
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――高くないですか,それ.
――ヒャハ,安いっくらいだっつの!
――うむ.そのくらいはなぁ.
――….わかりました.
「ごめん」
降谷が言ったので,栄純は箸を止めた.
さすがに付き合いも半年ちょっとになる.ほとんどいつも通りの顔だが,それが如何に真剣で,焦っているか分かった.
二人の間を食堂の喧騒が流れ,栄純はじっと降谷を見つめた.
「どうした?」
「明日.クリスマスだけど」
栄純は目を瞬かせた.最近忙しくてクリスマスが近いことすら忘れていたし,何より降谷の口からそんな年中行事の名前が出るのは不思議な現象だった.
降谷はため息を吐くと,うなだれた.ぴんと背を伸ばしていると凛々しく見えるその姿が,丸っこくなってちょっと情けない.
「君に,プレゼントしようと思ったんだけど…お金,なくて,あんまりいいものじゃないかも」
栄純は目を見開いた.本日二度目のびっくりは,食べ物を口に含んでいなくてよかったと思うほどだった.
そもそもプレゼントを渡す約束なんてしていない.記憶を手繰り寄せてみてもそんな覚えはないのでそれを慌てて言うと,知ってる,とさらりと返事された.また面食らう.
「僕が,君にもらってほしいだけだから」
「や…でも…」
「何かもらえるなら,それも嬉しいけど」
「よ,用意してねーんだってば」
「だから僕があげるよ」
嫌?なんて尋ねられてしまっては,栄純には何も言えない.
おろおろ視線をさ迷わせる栄純を降谷がじっと見つめ,その更に後ろからは他の野球部の面々が,ぎりぎりしながら降谷を睨み付けていたのであった.
最後にクリスマスにプレゼントをもらったのは小学生のときだ.
――降谷,何くれるんだろ?
そりゃあ欲しいものは沢山ある.新しいグローブに野球雑誌,アンダーの替えはいくらあっても足りない.
――けど金ないって言ってたしなぁ….
栄純は寝返りを打った.多分お金のかからないものなんだろうが,逆にわからない.
降谷は不器用だから何かを作ったり出来ないだろうし,いいアイディアを思いつくほど頭が働くタイプでもない.
「クリスマスカード」というのが眠い頭で無理矢理考え出した答えだったが,降谷がクリスマスカードを書いているのはあまりにもシュールだと栄純は思った.ちょっと悪いかなと思いつつ,笑ってしまった.
気になるけれど今日もいつも通り練習があったので,正直眠い.
いつの間にか瞼は下りて,栄純は眠っていた.
ぼんやり起きてまず思ったのは,あったかいなあ,ということだった.朝練の鬼(自称)の栄純も冬の朝は寒くてなかなか布団から出られないのだが.不思議だなあと思って緩んだ瞼をのんびり下ろした.
冷気から逃げるように布団の中で丸くなると,声が振ってきた.
「かわいい…」
「………ふぇ」
栄純はまたゆるゆる瞼を動かす.
寝ぼけ眼を向けると,そこには降谷がいた.
栄純を抱き込むように,布団の中に.
「うっ…ぅわああああぁっ!?」
寮中に響き渡る大絶叫を至近距離で聞いた降谷は,眉根をぎゅっと寄せた.
栄純はそれどころではなく,目は白黒口はぱくぱくし続けている.見ていて飽きない.
「ば,ばか!何でこんな所にいるんだよっ!?」
当たり前の質問に降谷はさも当然のように言ってのけた.
「クリスマスおめでとう.栄純」
「へ」
目をまるくするその顔すら可愛いなあと思いながら,下の位置にある頭を胸に抱き寄せた.
瞬間栄純の顔がぼっと真っ赤になる.慌ててもがくが,ひっしと抱きしめられてビクともしない.
「離せ!」
「なんで?」
「なんでって…」
心底不思議そうに問われて栄純はふらふらと黒の双眸を伏せた.理由を聞かれると困ってしまう.
降谷はますます抱く力を強くし,ぽつりと言った.
「お金,かかったんだから」
不思議そうに見上げてきた栄純に,にこりと微笑んで,髪に顔を埋めた.
「ね,おめでとうって言って」
「…えぇ?」
「クリスマス,おめでとうって」
栄純は暫し降谷をまじまじと見つめていたが,観念したようにふうっと息を吐くと,彼の鼻先にちょんとキスをした.
「――っ,」
「クリスマスおめでと.…暁」
「――何でだよ!」
五号室前で怒り浸透な御幸に,倉持は呆れたように首を横に振った.
「ダメだっつの.今日の五号室は降谷の貸切だからな.あー,先輩達も帰って下さいね」
「うが.そういう訳だ」
『…っ!』
大量の高級プリンと新作ゲームソフトでしっかり買収されている五号室住人に,降谷以外の栄純好き達は一様に涙したのだった.
君と過ごす.
それが僕と君への,プレゼント.
終
降沢クリスマスはいつもより甘い.更に片想い度が低い!(笑)
HAPPY Xmas!!
(一応フリーです.お好きにどうぞ)
――ヒャハ,安いっくらいだっつの!
――うむ.そのくらいはなぁ.
――….わかりました.
「ごめん」
降谷が言ったので,栄純は箸を止めた.
さすがに付き合いも半年ちょっとになる.ほとんどいつも通りの顔だが,それが如何に真剣で,焦っているか分かった.
二人の間を食堂の喧騒が流れ,栄純はじっと降谷を見つめた.
「どうした?」
「明日.クリスマスだけど」
栄純は目を瞬かせた.最近忙しくてクリスマスが近いことすら忘れていたし,何より降谷の口からそんな年中行事の名前が出るのは不思議な現象だった.
降谷はため息を吐くと,うなだれた.ぴんと背を伸ばしていると凛々しく見えるその姿が,丸っこくなってちょっと情けない.
「君に,プレゼントしようと思ったんだけど…お金,なくて,あんまりいいものじゃないかも」
栄純は目を見開いた.本日二度目のびっくりは,食べ物を口に含んでいなくてよかったと思うほどだった.
そもそもプレゼントを渡す約束なんてしていない.記憶を手繰り寄せてみてもそんな覚えはないのでそれを慌てて言うと,知ってる,とさらりと返事された.また面食らう.
「僕が,君にもらってほしいだけだから」
「や…でも…」
「何かもらえるなら,それも嬉しいけど」
「よ,用意してねーんだってば」
「だから僕があげるよ」
嫌?なんて尋ねられてしまっては,栄純には何も言えない.
おろおろ視線をさ迷わせる栄純を降谷がじっと見つめ,その更に後ろからは他の野球部の面々が,ぎりぎりしながら降谷を睨み付けていたのであった.
最後にクリスマスにプレゼントをもらったのは小学生のときだ.
――降谷,何くれるんだろ?
そりゃあ欲しいものは沢山ある.新しいグローブに野球雑誌,アンダーの替えはいくらあっても足りない.
――けど金ないって言ってたしなぁ….
栄純は寝返りを打った.多分お金のかからないものなんだろうが,逆にわからない.
降谷は不器用だから何かを作ったり出来ないだろうし,いいアイディアを思いつくほど頭が働くタイプでもない.
「クリスマスカード」というのが眠い頭で無理矢理考え出した答えだったが,降谷がクリスマスカードを書いているのはあまりにもシュールだと栄純は思った.ちょっと悪いかなと思いつつ,笑ってしまった.
気になるけれど今日もいつも通り練習があったので,正直眠い.
いつの間にか瞼は下りて,栄純は眠っていた.
ぼんやり起きてまず思ったのは,あったかいなあ,ということだった.朝練の鬼(自称)の栄純も冬の朝は寒くてなかなか布団から出られないのだが.不思議だなあと思って緩んだ瞼をのんびり下ろした.
冷気から逃げるように布団の中で丸くなると,声が振ってきた.
「かわいい…」
「………ふぇ」
栄純はまたゆるゆる瞼を動かす.
寝ぼけ眼を向けると,そこには降谷がいた.
栄純を抱き込むように,布団の中に.
「うっ…ぅわああああぁっ!?」
寮中に響き渡る大絶叫を至近距離で聞いた降谷は,眉根をぎゅっと寄せた.
栄純はそれどころではなく,目は白黒口はぱくぱくし続けている.見ていて飽きない.
「ば,ばか!何でこんな所にいるんだよっ!?」
当たり前の質問に降谷はさも当然のように言ってのけた.
「クリスマスおめでとう.栄純」
「へ」
目をまるくするその顔すら可愛いなあと思いながら,下の位置にある頭を胸に抱き寄せた.
瞬間栄純の顔がぼっと真っ赤になる.慌ててもがくが,ひっしと抱きしめられてビクともしない.
「離せ!」
「なんで?」
「なんでって…」
心底不思議そうに問われて栄純はふらふらと黒の双眸を伏せた.理由を聞かれると困ってしまう.
降谷はますます抱く力を強くし,ぽつりと言った.
「お金,かかったんだから」
不思議そうに見上げてきた栄純に,にこりと微笑んで,髪に顔を埋めた.
「ね,おめでとうって言って」
「…えぇ?」
「クリスマス,おめでとうって」
栄純は暫し降谷をまじまじと見つめていたが,観念したようにふうっと息を吐くと,彼の鼻先にちょんとキスをした.
「――っ,」
「クリスマスおめでと.…暁」
「――何でだよ!」
五号室前で怒り浸透な御幸に,倉持は呆れたように首を横に振った.
「ダメだっつの.今日の五号室は降谷の貸切だからな.あー,先輩達も帰って下さいね」
「うが.そういう訳だ」
『…っ!』
大量の高級プリンと新作ゲームソフトでしっかり買収されている五号室住人に,降谷以外の栄純好き達は一様に涙したのだった.
君と過ごす.
それが僕と君への,プレゼント.
終
降沢クリスマスはいつもより甘い.更に片想い度が低い!(笑)
HAPPY Xmas!!
(一応フリーです.お好きにどうぞ)
小さなツリーとほんのちょっぴりのごちそう.
それにケーキと君がいれば,クリスマスの準備は万端.
やるかな?と思ったら,案の定三橋がキラキラした瞳を向けてきた.
涎を出しそうなほどなのに忘れないんだから偉い.
栄口はすぅ,と息を吸い込んだ.
「うまそうっ」
「うっ,ん,うまそうっ…!」
取り分けた料理にさっそく箸を伸ばす三橋を見て,栄口は笑った.急がなくても二人以外には誰もいないから,料理を取られる心配はないだろうに.
どこかに出かけるという案もあった.けれど部活でアクティブなクリスマス祝いは既にしてしまっている.たまにはこういうのんびりまったりしたクリスマスもいいだろう.
俺の家で,と言い出したのはたぶん栄口だが,じゃあケーキを,と言ったのは三橋だった.俺ケーキ好きなんだ,ありがとう,と栄口が言うと,三橋がほんのり頬を染めて,とても可愛いかった.
部室でしばらく互いに顔を赤らめていると,横から軽く肘鉄を食らった.水谷だ.
『栄口~,分かってる?』
『え?何が?』
『三橋,誕生日の時のことちゃんと覚えてて言ったんだよ』
ね!と言われてしどろもどろになった三橋がそろそろと上目遣いで見つめてきて,栄口は真っ赤になった.
水谷はにこにこ笑って,さーてと俺は帰りますよーなんてわざとらしく言って,他にいた面々の背を押して出て行った.いや正しくは,出て行ってくれた.
そうやって用意されたケーキだったから,小さかろうがコンビニケーキだろうが二人にとっては大事なケーキだ.
高いものは無理だから,三橋はチョコレートケーキ,栄口はいちごのショートケーキ.こういう可愛らしいものは三橋にこそ似合いそうだったけれど,愛しい恋人はチョコ派だった.違う味も食べられるし,これはこれで高校生らしくて何かいい.
料理を食べながらほのぼの笑いあって,最後にケーキに取りかかる.
銀のフォークがクリームにスポンジに沈み,口に運ぶととろりと溶けた.
「んーうまいなー」
「そ,うだっ,ねっ」
にこっと無防備に笑う三橋はなかなか見れなくて,栄口も思わず笑顔になる.
三橋はますます幸せな気分になりながら視線を落としケーキを切り,持ち上げた.
「は,い」
栄口は差し出されたケーキを見て目をまるくする.多分食べていいということだろうが,こうやって無意識に可愛いことをするのは危なくないだろうか.
「さかえぐち,くん?」
ほらそうやって,きょとりと小首を傾げたりして.
――可愛いなぁ,もう….
彼氏としてはとても心配なのだけれど,ここは甘い蜜にありつくとした.
テーブル越しに向けられたケーキ一口へ,口を近づける.
「…うん,おいしい」
ぱあっと顔を輝かせた三橋に,栄口もお返しと切り分けたチョコレートケーキをフォークに刺して口元へ運んだ.
三橋は恥ずかしがる素振りもなく一瞬で平らげ,おいひ,い,ねえと笑う.
「こっち,のが…」
「うん?」
「こっちのが,おいしい,ね!」
ほっぺたに手をやって咀嚼する三橋に,チョコよりショートの方がおいしかったかと三橋語を解読した栄口は自分の皿を持ち上げた.
「じゃ,コレ三橋が食べなよ」
「うおっ!?」
でもとか,うわとか三橋が目を白黒させている間に皿を取り替える.
三橋はいいのかなと言わんばかりにオロオロしていたが,栄口に微笑まれて小さく頷いた.暖房が効き過ぎているのか顔が赤い.
フォークで白いクリームをすくい,舐める.
「……?」
少し考えてからスポンジを一緒に食べてみて,三橋はゆっくり首を傾げた.
おいしい,けれど.
――なんかちがう…?
さっき食べたのとは何か味が違う.さっきの方がおいしかった.
けれど替えてもらった手前,そんなことを言うのが失礼なのも分かる.
さっきほどでなくても充分おいしいことに変わりはないので,不思議だなぁと思いながら食べていると,ハッとした.
「あっ」
思わず声が出てしまう.もちろん栄口はキョトンとして三橋を見た.
「うん?どうかした?」
「あ,あの,ねっ」
穏やかな眼差しを向けられ,三橋は勢いよく言った.
「ケーキが,おいしかった,のはっ…さかえぐち,くんが,食べさせてく,くれたから,だねっ…!」
「…!」
ほわり,と心に明かりが灯ったかのような.かと思えば煌々と燃え始めて胸が破裂しそうな,そんな.
――天然だって分かってるけど,だけどさ…!
心から嬉しそうにそんな可愛いことを言うなんて,反則にも程があるだろう.
俯いてしまった栄口に,三橋はまた首を傾いだ.
「?栄口,くん?」
「う,やあ,うん…」
その赤い赤い顔は,三橋の皿の上転がった,いちごみたいだった.
終
空月はサカミハに甘いので,自然と栄口君はいい思いをします(笑)
HAPPY Xmas!!
(一応フリーです.お好きにどうぞ)
それにケーキと君がいれば,クリスマスの準備は万端.
やるかな?と思ったら,案の定三橋がキラキラした瞳を向けてきた.
涎を出しそうなほどなのに忘れないんだから偉い.
栄口はすぅ,と息を吸い込んだ.
「うまそうっ」
「うっ,ん,うまそうっ…!」
取り分けた料理にさっそく箸を伸ばす三橋を見て,栄口は笑った.急がなくても二人以外には誰もいないから,料理を取られる心配はないだろうに.
どこかに出かけるという案もあった.けれど部活でアクティブなクリスマス祝いは既にしてしまっている.たまにはこういうのんびりまったりしたクリスマスもいいだろう.
俺の家で,と言い出したのはたぶん栄口だが,じゃあケーキを,と言ったのは三橋だった.俺ケーキ好きなんだ,ありがとう,と栄口が言うと,三橋がほんのり頬を染めて,とても可愛いかった.
部室でしばらく互いに顔を赤らめていると,横から軽く肘鉄を食らった.水谷だ.
『栄口~,分かってる?』
『え?何が?』
『三橋,誕生日の時のことちゃんと覚えてて言ったんだよ』
ね!と言われてしどろもどろになった三橋がそろそろと上目遣いで見つめてきて,栄口は真っ赤になった.
水谷はにこにこ笑って,さーてと俺は帰りますよーなんてわざとらしく言って,他にいた面々の背を押して出て行った.いや正しくは,出て行ってくれた.
そうやって用意されたケーキだったから,小さかろうがコンビニケーキだろうが二人にとっては大事なケーキだ.
高いものは無理だから,三橋はチョコレートケーキ,栄口はいちごのショートケーキ.こういう可愛らしいものは三橋にこそ似合いそうだったけれど,愛しい恋人はチョコ派だった.違う味も食べられるし,これはこれで高校生らしくて何かいい.
料理を食べながらほのぼの笑いあって,最後にケーキに取りかかる.
銀のフォークがクリームにスポンジに沈み,口に運ぶととろりと溶けた.
「んーうまいなー」
「そ,うだっ,ねっ」
にこっと無防備に笑う三橋はなかなか見れなくて,栄口も思わず笑顔になる.
三橋はますます幸せな気分になりながら視線を落としケーキを切り,持ち上げた.
「は,い」
栄口は差し出されたケーキを見て目をまるくする.多分食べていいということだろうが,こうやって無意識に可愛いことをするのは危なくないだろうか.
「さかえぐち,くん?」
ほらそうやって,きょとりと小首を傾げたりして.
――可愛いなぁ,もう….
彼氏としてはとても心配なのだけれど,ここは甘い蜜にありつくとした.
テーブル越しに向けられたケーキ一口へ,口を近づける.
「…うん,おいしい」
ぱあっと顔を輝かせた三橋に,栄口もお返しと切り分けたチョコレートケーキをフォークに刺して口元へ運んだ.
三橋は恥ずかしがる素振りもなく一瞬で平らげ,おいひ,い,ねえと笑う.
「こっち,のが…」
「うん?」
「こっちのが,おいしい,ね!」
ほっぺたに手をやって咀嚼する三橋に,チョコよりショートの方がおいしかったかと三橋語を解読した栄口は自分の皿を持ち上げた.
「じゃ,コレ三橋が食べなよ」
「うおっ!?」
でもとか,うわとか三橋が目を白黒させている間に皿を取り替える.
三橋はいいのかなと言わんばかりにオロオロしていたが,栄口に微笑まれて小さく頷いた.暖房が効き過ぎているのか顔が赤い.
フォークで白いクリームをすくい,舐める.
「……?」
少し考えてからスポンジを一緒に食べてみて,三橋はゆっくり首を傾げた.
おいしい,けれど.
――なんかちがう…?
さっき食べたのとは何か味が違う.さっきの方がおいしかった.
けれど替えてもらった手前,そんなことを言うのが失礼なのも分かる.
さっきほどでなくても充分おいしいことに変わりはないので,不思議だなぁと思いながら食べていると,ハッとした.
「あっ」
思わず声が出てしまう.もちろん栄口はキョトンとして三橋を見た.
「うん?どうかした?」
「あ,あの,ねっ」
穏やかな眼差しを向けられ,三橋は勢いよく言った.
「ケーキが,おいしかった,のはっ…さかえぐち,くんが,食べさせてく,くれたから,だねっ…!」
「…!」
ほわり,と心に明かりが灯ったかのような.かと思えば煌々と燃え始めて胸が破裂しそうな,そんな.
――天然だって分かってるけど,だけどさ…!
心から嬉しそうにそんな可愛いことを言うなんて,反則にも程があるだろう.
俯いてしまった栄口に,三橋はまた首を傾いだ.
「?栄口,くん?」
「う,やあ,うん…」
その赤い赤い顔は,三橋の皿の上転がった,いちごみたいだった.
終
空月はサカミハに甘いので,自然と栄口君はいい思いをします(笑)
HAPPY Xmas!!
(一応フリーです.お好きにどうぞ)
これも書きかけ御免
決して長身とは言えない身体から放たれる白球.
目で追う分にはただ少し遅い球にしか見えない魔法のボールが,キャッチャーミットに吸い込まれた.
「ストライク!バッターアウト!」
青道側のベンチが沸き立つ.九回裏のツーアウト,あと一つでこの練習試合は青道の勝利が決定するのだから当然だ.逆に薬師側ベンチが肩を落とすのも仕方ないこと.
秋晴れの絶好の野球日和に青道対薬師の練習試合が組まれた.甲子園予選の縁もあり,どちらが言い出したでもなく日取りと場所が設定されたのは敏腕副部長の活躍があったに違いない.
青道は先発降谷,中継ぎを川上が担い,最後に出てきた栄純は二人が一点ずつ取られた点数を維持した.薬師とて悪くない内容だったが三年の引退が相当響いたらしい.
それでも真田や雷市を中心に据えた布陣はなかなかのもので,青道も大量得点というわけにはいかなかった.現在のスコアは3‐2.油断できない膠着状態が続いている.
御幸に投げ返されたボールを栄純が受け取った.額には汗が浮かんでいるものの,その表情からは落ち着きが窺える.この夏での成長の証だろう.
――あとひとつ!
栄純の中に,油断よりもむしろ闘争心と高揚感が沸き起こった.やはり野球は楽しい――そしてこのマウンドで投げられることを嬉しく思う.
「沢村ーあと一つだぞーっ!」
「抑えろ沢村ー!」
「頑張れー!」
みんなの声が嬉しくて,手の中のボールから視線を上げると栄純はにこっと笑った.
「おうっ!」
「「「……!」」」
天使のような可愛らしい笑顔に皆崩れ落ちたり悶えたり忙しい.
それは敵側の薬師とて同じだった.
「何だアレあの可愛い生き物天使か何かか?」
「あはは…まあ,確かに」
総受けというか青道vs薬師みたいな.他校×栄純祭の一貫.
決して長身とは言えない身体から放たれる白球.
目で追う分にはただ少し遅い球にしか見えない魔法のボールが,キャッチャーミットに吸い込まれた.
「ストライク!バッターアウト!」
青道側のベンチが沸き立つ.九回裏のツーアウト,あと一つでこの練習試合は青道の勝利が決定するのだから当然だ.逆に薬師側ベンチが肩を落とすのも仕方ないこと.
秋晴れの絶好の野球日和に青道対薬師の練習試合が組まれた.甲子園予選の縁もあり,どちらが言い出したでもなく日取りと場所が設定されたのは敏腕副部長の活躍があったに違いない.
青道は先発降谷,中継ぎを川上が担い,最後に出てきた栄純は二人が一点ずつ取られた点数を維持した.薬師とて悪くない内容だったが三年の引退が相当響いたらしい.
それでも真田や雷市を中心に据えた布陣はなかなかのもので,青道も大量得点というわけにはいかなかった.現在のスコアは3‐2.油断できない膠着状態が続いている.
御幸に投げ返されたボールを栄純が受け取った.額には汗が浮かんでいるものの,その表情からは落ち着きが窺える.この夏での成長の証だろう.
――あとひとつ!
栄純の中に,油断よりもむしろ闘争心と高揚感が沸き起こった.やはり野球は楽しい――そしてこのマウンドで投げられることを嬉しく思う.
「沢村ーあと一つだぞーっ!」
「抑えろ沢村ー!」
「頑張れー!」
みんなの声が嬉しくて,手の中のボールから視線を上げると栄純はにこっと笑った.
「おうっ!」
「「「……!」」」
天使のような可愛らしい笑顔に皆崩れ落ちたり悶えたり忙しい.
それは敵側の薬師とて同じだった.
「何だアレあの可愛い生き物天使か何かか?」
「あはは…まあ,確かに」
総受けというか青道vs薬師みたいな.他校×栄純祭の一貫.
書きかけ御免
強気の瞳は嫌いじゃない.
一年にしてはよくもこれだけ攻撃的な眼が出来るものだと、感心したとしても、だ.
ただ真っ黒の何の変哲も無かった双貌は,直ぐ目の前で見るとまるで異なった風情.黒曜石というよりはブラックオパールだ.この少年は知る由も無いだろう七色に輝く石は,そう言えば彼の投げるボールにも酷似している,かもしれない.
栄純は頬から唇の端の辺りの筋肉を引きつらせた.突然のことに言葉も出なかった栄純だったが,さすがにキスでもするんじゃないかという程に近づいている敵校のエース相手にこの至近距離を許し続ける気は無かった.
ギスギスしてますまだ.
お題はてぃんがぁら様より.
強気の瞳は嫌いじゃない.
一年にしてはよくもこれだけ攻撃的な眼が出来るものだと、感心したとしても、だ.
ただ真っ黒の何の変哲も無かった双貌は,直ぐ目の前で見るとまるで異なった風情.黒曜石というよりはブラックオパールだ.この少年は知る由も無いだろう七色に輝く石は,そう言えば彼の投げるボールにも酷似している,かもしれない.
栄純は頬から唇の端の辺りの筋肉を引きつらせた.突然のことに言葉も出なかった栄純だったが,さすがにキスでもするんじゃないかという程に近づいている敵校のエース相手にこの至近距離を許し続ける気は無かった.
ギスギスしてますまだ.
お題はてぃんがぁら様より.