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どうしようもないネタメモブログ。 ツッコミ可。空月のツッコミ返し有。 原稿とかで忙しい時はこっちで更新してます。
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――高くないですか,それ.
――ヒャハ,安いっくらいだっつの!
――うむ.そのくらいはなぁ.
――….わかりました.



「ごめん」
降谷が言ったので,栄純は箸を止めた.
さすがに付き合いも半年ちょっとになる.ほとんどいつも通りの顔だが,それが如何に真剣で,焦っているか分かった.
二人の間を食堂の喧騒が流れ,栄純はじっと降谷を見つめた.
「どうした?」
「明日.クリスマスだけど」
栄純は目を瞬かせた.最近忙しくてクリスマスが近いことすら忘れていたし,何より降谷の口からそんな年中行事の名前が出るのは不思議な現象だった.
降谷はため息を吐くと,うなだれた.ぴんと背を伸ばしていると凛々しく見えるその姿が,丸っこくなってちょっと情けない.
「君に,プレゼントしようと思ったんだけど…お金,なくて,あんまりいいものじゃないかも」
栄純は目を見開いた.本日二度目のびっくりは,食べ物を口に含んでいなくてよかったと思うほどだった.
そもそもプレゼントを渡す約束なんてしていない.記憶を手繰り寄せてみてもそんな覚えはないのでそれを慌てて言うと,知ってる,とさらりと返事された.また面食らう.
「僕が,君にもらってほしいだけだから」
「や…でも…」
「何かもらえるなら,それも嬉しいけど」
「よ,用意してねーんだってば」
「だから僕があげるよ」
嫌?なんて尋ねられてしまっては,栄純には何も言えない.
おろおろ視線をさ迷わせる栄純を降谷がじっと見つめ,その更に後ろからは他の野球部の面々が,ぎりぎりしながら降谷を睨み付けていたのであった.



最後にクリスマスにプレゼントをもらったのは小学生のときだ.
――降谷,何くれるんだろ?
そりゃあ欲しいものは沢山ある.新しいグローブに野球雑誌,アンダーの替えはいくらあっても足りない.
――けど金ないって言ってたしなぁ….
栄純は寝返りを打った.多分お金のかからないものなんだろうが,逆にわからない.
降谷は不器用だから何かを作ったり出来ないだろうし,いいアイディアを思いつくほど頭が働くタイプでもない.
「クリスマスカード」というのが眠い頭で無理矢理考え出した答えだったが,降谷がクリスマスカードを書いているのはあまりにもシュールだと栄純は思った.ちょっと悪いかなと思いつつ,笑ってしまった.
気になるけれど今日もいつも通り練習があったので,正直眠い.
いつの間にか瞼は下りて,栄純は眠っていた.



ぼんやり起きてまず思ったのは,あったかいなあ,ということだった.朝練の鬼(自称)の栄純も冬の朝は寒くてなかなか布団から出られないのだが.不思議だなあと思って緩んだ瞼をのんびり下ろした.
冷気から逃げるように布団の中で丸くなると,声が振ってきた.
「かわいい…」
「………ふぇ」
栄純はまたゆるゆる瞼を動かす.
寝ぼけ眼を向けると,そこには降谷がいた.
栄純を抱き込むように,布団の中に.
「うっ…ぅわああああぁっ!?」
寮中に響き渡る大絶叫を至近距離で聞いた降谷は,眉根をぎゅっと寄せた.
栄純はそれどころではなく,目は白黒口はぱくぱくし続けている.見ていて飽きない.
「ば,ばか!何でこんな所にいるんだよっ!?」
当たり前の質問に降谷はさも当然のように言ってのけた.
「クリスマスおめでとう.栄純」
「へ」
目をまるくするその顔すら可愛いなあと思いながら,下の位置にある頭を胸に抱き寄せた.
瞬間栄純の顔がぼっと真っ赤になる.慌ててもがくが,ひっしと抱きしめられてビクともしない.
「離せ!」
「なんで?」
「なんでって…」
心底不思議そうに問われて栄純はふらふらと黒の双眸を伏せた.理由を聞かれると困ってしまう.
降谷はますます抱く力を強くし,ぽつりと言った.
「お金,かかったんだから」
不思議そうに見上げてきた栄純に,にこりと微笑んで,髪に顔を埋めた.
「ね,おめでとうって言って」
「…えぇ?」
「クリスマス,おめでとうって」
栄純は暫し降谷をまじまじと見つめていたが,観念したようにふうっと息を吐くと,彼の鼻先にちょんとキスをした.
「――っ,」
「クリスマスおめでと.…暁」




「――何でだよ!」
五号室前で怒り浸透な御幸に,倉持は呆れたように首を横に振った.
「ダメだっつの.今日の五号室は降谷の貸切だからな.あー,先輩達も帰って下さいね」
「うが.そういう訳だ」
『…っ!』
大量の高級プリンと新作ゲームソフトでしっかり買収されている五号室住人に,降谷以外の栄純好き達は一様に涙したのだった.



君と過ごす.
それが僕と君への,プレゼント.





降沢クリスマスはいつもより甘い.更に片想い度が低い!(笑)

HAPPY Xmas!!
(一応フリーです.お好きにどうぞ)
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