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これ以上の密室ってなくないですか?
(琳野様リク→でろ甘サカミハ)
さ。三橋が言った。
確かに言ったのは「さ」その一文字で、たったそれだけだったのだけれど、何を言いたいかわかって俺は返事する。たぶん、俺の名前を呼ぼうとしたんだ。だよね?
「なに?」
こちらを見上げる三橋は不思議そうな顔をした。不安げ、ともまた違う。純粋に何かを疑問に思っていて、それがわからない、って顔。
ただ、今は三橋の顔が俺から見るとさかさまになっているので、もしかしたら間違えているかもしれない。
反転してもその顔は可愛らしくて、ああ、いいな、と思ってしまう。
三橋は口をぱくぱく金魚のように開け閉めすると、俺の眼前で問うた。
「ど、して、こんな、体勢、なの?」
「うーん。どうしてかな?」
にっこり微笑むと、三橋は頬をかすかに桃色に染めて、ええと、と呟いて。
「だ、誰もいない、か、ら…?」
可でもなく不可でもない答えを言いつつ、目を逸らす。
それは当たっているかもしれない。三橋を好きな奴らは本当に多いし、相当手ごわいから掻い潜るのは至難の業だ。俺は別に部内に波風立てる気もないし、俺、というより三橋が困ったり悩んだりする必要はないと思うわけで。(困ったり悩んだり。ああ、それって恋愛っぽいな。その方がいいのかな?)
それから、ここは鍵をかけた屋上というある意味密室だ。こんな開けた密室、他にはないだろうけど。
けれど、二人きりだから――というのは、根本的なところで違う気もしている。
後ろから三橋の顔を覗き込んで、前髪に口づけた。
「ひゃあ」
驚いて小さく悲鳴を漏らすと、三橋はほう、と息を吐いて身体の力を抜いた。前は逆にかっちんこっちんに固まっていたから、進歩だなー。
「その内、わかるよ」
笑いながら、三橋に言った。
屋上の入口付近の壁に背を預け、三橋はそんな俺の胸に背を預け。三橋の頭がときどき動いて、くすぐったい。
三橋は俺の言葉をやっぱり意味がわからない、とばかりに聞いていたけれど、別に不安がることもなくとりあえず頷いて、絡ませた俺の手を適当に弄んだ。硬い皮膚同士が温度を分け合った。
空を見上げるとところどころに雲が浮かび、ゆっくり、確実に流れてゆく。日差しが心地よくて今にも寝てしまいそう。さすがに恋人といっしょにいるときに寝てしまうのは申し訳ないので、目を強くつぶって眠気を紛らわす。瞬間、三橋が身じろぎするのが伝わってきた。三橋も、眠くなったの、かな――?
けれど、目を開けるとふんわりした光と共に目の前にあったのは可愛い三橋の寝顔ではなくて。
優しく甘く微笑んだ、俺の恋人の顔。
今度は反転していない。身じろいだのは俺と向かい合うように座るためだったみたいだ。三橋が正面から抱きつくような形になっている。
俺の首の後ろに、両手が回される。
「そっ、か」
多分きょとんとしているであろう俺の額に、ちゅ、と可愛らしく口づけた。
「おれ、閉じ込め、られちゃっ、た?」
首を傾げて、綺麗に笑んだままの言葉。
それは問いだったのか、答えだったのかはよくわからない。
でも、とても正しいことを言われたのは本当。
「そうだね――」
正面から華奢な身体を抱きしめると、三橋の顔が視界から消える。
「ゆう、と――?」
今度は間違いなく不安げに、俺の名を呼ぶ声。
「だいじょうぶだよ、廉」
大丈夫、どこにも行かないよ。
だって君の言ったように。
俺は君を、この腕の中、閉じ込めているんだから。
そして、君は俺を、
ずっと、
この愛の中に閉じ込めて、決して放してはくれないんだ。
終
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釈明→
・短時間で書いた即興文のため、いろいろおかしい。
・でろ甘の意味を履き違えている。
・怖くて読み直していない(おま)
・琳野さんごめんなさいorz