どうしようもないネタメモブログ。
ツッコミ可。空月のツッコミ返し有。
原稿とかで忙しい時はこっちで更新してます。
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朝の陽光が障子越しに降り注ぐ。
薄暗い部屋の中に陰影が生じて、段々とものの輪郭がはっきりしてゆく。箪笥、本棚、文机、その上の細かな道具たち。
畳の温かな色合いが太陽の光を反射した。
部屋の中央に盛り上がった布団が柔らかな光を受けて、もぞ、と動く。けれども布団の主は一行に起きる気配はなく、動いた状態で静止を決め込んだ。
また訪れた静寂。それを破るかのように、遠くから足音が響いてくる。
ぱたぱた、と木板の廊下を早足で過ぎる足音は部屋の前で止まった。
一瞬の間を置いて、障子が勢いよく開かれる。
眼鏡をかけた少年が両の口角をそれはそれは楽しそうに吊り上げて、大音量で声を張り上げた。
「沢村ー!あっさだぞー!」
彼――御幸一也は、にこやかな笑顔でどかどか部屋に入り込んだ。しかし布団を頭から被った当人はまるで起きる気配がない。
御幸は枕元にしゃがみこむと、おそらく頭があるであろう位置に顔を近づける。
「ほらほら、早く起きないとー…」
にこやかな笑みが途端に怪しいものへと変わり、そっと布団に手がかかった。
「おはようのキスしちまうぞ」
「うわああああっ!?」
御幸が布団を剥ぎ取ろうとした瞬間、絶叫と共に布団が捲り上がり御幸はひっくり返った。壁に頭を強打する。
御幸は後ろ頭を擦りながら、目を細めて目の前の少女を見つめた。
「いってー…何するんだよ沢村ー」
「うるさいっ!何部屋入ってきてんだよっ!」
布団の上で顔を真っ赤にしているのはこの部屋の主である少女、沢村栄純。今は薄手の寝間着姿で、御幸を払い除けたせいかそもそも寝像が悪いのか、前合わせの寝間着は白い肌がそこかしこから覗いている。
栄純は御幸との間に壁を作るようにかけ布団をぎゅっと抱くと、御幸を睨みつけた。若干涙目でそんなことをしても御幸を煽るだけなのだが、栄純は何時までもそれに気付かない。
――かわいいけど、危ねえんだよなー。
御幸は胡散臭い笑顔を崩さぬまま内心では苦笑すると、わざと栄純に近づいた。栄純が唇を噛んで威嚇しつつ後ずさる。
「沢村、早くしないと朝飯無くなるぞ?」
「ぬっ!」
朝飯の一言に過敏に反応した栄純は、ぴくんと肩を震わせた。
朝飯に間に合わなくては怒られてしまう。それに一日の初めから食事抜きはいくらなんでも辛い。
早くしないと他の面々に食べられてしまう、と栄純は慌てて立ち上がった。箪笥から着替えを引っ張り出し、寝間着を脱ぎ捨てようとしたところで御幸と目が合う。
「……なに?」
「いや?どーぞ。続けていいぞ」
手で示され、栄純は不思議そうに首を傾げて着替えを再開しようとした。
しかしそれは突然耳に届いた木板を踏みつける足音でまた中断される。足音はひとつではない。音が重なりくぐもって、栄純の部屋の前で止まった。
彼等の顔は怒りと懐疑で彩られ、少なくとも目の前の状況への苛立ちを隠していない。
「てめえ御幸!何やってんだ!?」
「おーおー倉持、朝っぱらからうるせーよ。近所迷惑だぞ」
「御幸先輩、それはあんまりだと…!」
「小湊弟、あんまり気にするな。沢村の着替えを手伝ってただけだから」
「それが問題だろう…」
御幸がげ、と顔を引き攣らせた。倉持と春市の横に現れたのはクリスだった。栄純の教育係である彼にこういうことがバレるのはあまり芳しくない。
彼が現れると、栄純はぱっと顔を輝かせた。
「クリス先輩!どうしたんすか、珍しいっすね!」
「ああ、どこかの誰かが邪な事を始めるかもしれないと知らせを受けて、な…」
御幸を厳しい目で見ると――その中には幾分呆れと苦笑が混じっていた――栄純はきょとんと御幸を見て、それからまたクリスに視線を戻した。
「クリス先輩、違いますっ!」
「え?」
「だって」
栄純はにっこり笑った。朝の光を受けて輝く笑顔が眩しい。ちょっと寝ぐせが跳ねているのですら栄純によく似合った。
「御幸のヤロー、俺の着替え手伝ってませんよ!見てただけです!」
「……や、だからな…?」
絶句する倉持・春市に、額に手を当て肩を落とすクリス。
コイツはどこまで天然なら気が済むんだ…と、三人は思い、御幸は声を殺して大爆笑していた。
続
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ようやく始動。にょた栄純総受けお江戸ぱろ。
第一話の1、みたいな。
しかしお江戸要素が少なくて笑える…。
あとでちゃんとHTML化します。はい。
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