どうしようもないネタメモブログ。
ツッコミ可。空月のツッコミ返し有。
原稿とかで忙しい時はこっちで更新してます。
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「しんっじらんねーーー!」
栄純はロッカーを乱暴に閉めた。金属が軋んで耳障りな音を立てる。
その様子を見て春市は苦笑する。基本的にさっぱりした性格の栄純はひとつのことにいつまでもぐだぐだこだわったりする性格ではない。こんな風に部活が終わってもまだ昼間のことを気にしているのかと思うと、むしろ“彼”は思われているのではないだろうかとさえ感じる。
「まあ、降谷くんも悪気があったわけじゃないと思うよ?たぶん」
「いや!春っち、あれは俺をおとしめようとした罠だぞ!」
わんわん吠えるように喚く栄純は確かに小犬みたいだなあと春市は思った。あれ、誰がそんなこと行ってたんだっけ?と首を傾げ、問題の“彼”であったと思い出した。そういえば小犬みたいで可愛いとつぶやいていた気がする。
春市が栄純を宥めようと口を開きかけると部室のドアが開いた。
入ってきたのは、
「あ、降谷くん・・・」
「!」
練習で汗だくの降谷を見て、栄純は固まった。その頬にさっと赤みがさしたのに気付かない春市ではないが、このまま放っていくのもかわいそうかなあと二人に挟まれ微妙な気分になる。
降谷は二人を一瞥し、自分のロッカーへ向かった。幸か不幸か彼のロッカーは栄純や春市から離れたところにあったので、あまり顔を合わせずに済んだ。
春市が横に視線を移すと、栄純は既に着替えを終え、春市を待っているようだった。その実ちらちらと降谷の方を見ているのだから、なんとはなしに微笑ましくなってしまう。
――なんだかこのまま俺が栄純くんと帰ったら、むしろ降谷くんがかわいそうかも。
春市が荷物を抱えると栄純の表情がほっとしたものへと変わった。
「春っち・・・終わり?」
「うん。あ、でも」
降谷を振り替えって、一言。
「降谷くん、栄純くんに何か話あるみたいだから」
「え゛」
「俺先行くね」
にっこり微笑んで、栄純の肩に手を置き、春市は部室を出て行ってしまった。視界の端に、普段は無表情だノーリアクションだと言われる彼の動きが確かに止まるのを捕らえて、吹き出しながら。
春市がいなくなってしまい、かといって二人の間に会話があるわけでもない。いつもだったら栄純がどうでもいいくだらない話を始めるのだが、今日はそれもなかった。
ではなぜなのかと考えると、昼休みのことが頭を過ぎるわけで。
「・・・降谷」
ぽつりとつぶやくように名を呼ばれ、降谷は栄純を振り向いた。普段あれだけうるさい栄純が俯いていて、それだけで自分のした事の重大さがわかる。
「なんで・・・あんなことしたんだよ・・・」
「言ったでしょ。お返し」
栄純が勢いよく顔を上げた。目元にうっすら涙が溜まっていて、さすがの降谷も目を見開く。
「俺はバレンタイン、何もやってねえってば!」
「知ってる。欲しいって言ったのに、くれなかったもんね。だから代わりに」
「だ、だからって・・・みんなの前で!」
そう。今日の昼休み、いつものように春市のところに遊びに来ていた栄純は、突然降谷に渡されたのだ。綺麗にラッピングされたお菓子の箱を。当然のように教室中、いや降谷は女の子に人気があるから学校中の噂になっただろう。それも栄純は降谷にチョコなどあげていなかったのだから、いい迷惑である。
「お前女の子に無駄に人気あるんだから、ああいうこと、ほんと、やめろよな・・・!?」
降谷は着替えを終え、ため息をついた。ああ、相変わらずこの鈍感は、何もわかっていないのだと。
栄純は野球部を始め男にやたら人気があるのだ。本人はまるで気付いていないのだろうが、クラス内でも同じこと。
降谷はこちらを睨み付けてくる栄純に近づいた。瞬間栄純は後ずさりかけたが、悔しかったのかなんなのか唇をぎゅっとむすんで踏み止まる。
――そういうのも、可愛いだけだってば。
「沢村」
「なん・・・だよっ」
「ごめん。君が僕のものだって、見せ付けたくて」
「は」
栄純はまあるい艶々した瞳をますます開いた。
降谷の手が栄純の頬に伸び、赤みがかったそれに触れる。
「だって君、自覚ないし」
「なっ、なんの」
「いろんな人に好かれてるのに、全然気付かない」
「へ、や、そんな」
「でも僕が一番好きだから。君のこと」
手にちょっと力を入れて、こちらに栄純の顔を近づけて。
「あわっ・・・!?」
バランスを崩した栄純を抱き留める。持ったカバンがどさっと床に落ちた。
幼さが残る可愛らしい真っ赤な顔に、吐息がかかりそうな位置で唇を寄せる。
「好きだよ。栄純」
ささやいて、唇を奪って、抱きしめる力を強くした。
愛しいこの子の唇からは、あげたキャンディの甘い味がした。
終
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降沢ホワイトデー。
だってもらったもんは食べるもん!それだけだからなっ!?好き、とかじゃ、ないッ!!
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