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どうしようもないネタメモブログ。 ツッコミ可。空月のツッコミ返し有。 原稿とかで忙しい時はこっちで更新してます。
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「司馬…あの、さ」
「何て言うかあれだ、その」
「お前もうちょっとしゃべった方が、あ、いやでも、嫌ならいいんだけど、」
「あーわり、俺ってさー、その」
「俺はさ、お前が」
「うーん…?」


とうとう首を傾げてしまった猿野に司馬は微笑む。
「猿野」
小さな声に、くるくる変わっていた猿野の表情が止まる。
「俺も、好きだよ」
「!」
真っ赤な顔がとてもとても可愛らしいので、声を上げて笑った。
ちょっと下手な笑顔だったけれど、猿野は嬉しそうだったので良かったなと思う。


上手く言おうとしないでいいよ
馬猿
(たった一言の雄弁なこと!)


お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
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遊郭パラレル(江戸パロとは無関係)
栄純女体化注意



勿論、互いのことは知っていた。
片や清渡来の貿易商、片やこの辺一体を取り仕切る同心である。互いに顔は知らずとも有名な二人であったし、話の種になることも多かった。ただ、別に是と言って接点が無かっただけのこと。
だから顔を合わせるのは是が最初で最後であろうと、どちらからともなく思った。
初対面の二人は、布団を挟んで向かい合う。その布団の主に与えられた部屋は妙な具合に広く、中央で男二人が布団を囲み縮こまっているのも傍目には奇妙だった。
楊は正座を崩さず、仕立ての良い着物に袖を通していた。一目でわかる一張羅だったが、慌てて出て来たのが取れかかった細工物の帯飾りに見て取れる。
彼はゆっくり、布団の少女の額に手を置いた。
「熱い」
存外低い声が響く。当たり前だろうと思われたが、そうやって確認しないと平静を保てないのだと知れた。
真田は出かけ先から走ってきたので、日に焼けた肌に玉の汗を浮かべていた。羽織りの襟口を直し、頭を掻く。胡座をかいているのが彼の動揺なのだろう。職業による座り方というものがこの国にもあろうが、崩れた形でも正座をする同心を楊は知っている。
真田は布団の外に出た少女の手を握る。
「栄」
粗野な同心の意外に柔らかな声が、夏だというのにひんやりした部屋に広がり溶けた。薄い氷のようだった。
布団に横たわっているのは十五、六の少女だった。黒い髪、閉じた瞼の奥には艶やかな黒い双貌がある。本人曰く歳など記憶にない。だから十五、六というのはあくまで見た目による憶測に過ぎない。
少女は顔を赤く蒸気させ、息苦しそうに口の端から息を吐き出した。赤に色づいてすら映る息は、今にも血を吐くように見えた。
少女はいつもの鮮やかな赤い着物を身に付けている。幾ら病で伏せっていたとしても、遊女である彼女は客の前に出る時必ず着飾らなければならなかった。
二人は無理に着飾って迎えた少女を見て唇を噛んだ。けれども白い肌襦袢など着ていたら、死に装束にしか見えなかった筈なのだ。
少女はうっすら目を開けた。半分しか開かない瞼と虚ろな黒い瞳が世界を映す。
二人は少女の顔を覗き込んだ。彼らの姿は二十歳に届こうという大人にしては幼く見えた。
「栄」
「栄純」
名を呼ぶ。大の大人の情けなく震えた声が耳に入って、栄純は笑う。力など殆ど残っていないだろうに、笑顔は相変わらず太陽のようにきらめいた。
小さな唇が震えるように言葉を紡ぐ。



「しゅん、」



「ああ」
「おう」
二人は泣き笑いのように顔を歪めて、愛しい遊女にそれぞれ口づけた。
『真田のお兄ちゃん』
『楊さま』
いつもの呼び名と違うのはきっと誤魔化し等ではなく。
二人を欲したのだと、思いたかった。







趣味に走った。後悔はしていないが遊郭パラレルの必要があったかどうかは疑問。←
死にネタではないです、よ!!!


また次の宵に、来て。
「兄ちゃーん」
ライバルのガン黒投手といがみ合っているところ目掛けて、ジャンプ。腰に手を回して抱きつく。案外細い締まった腰に。
犬飼の顔がムッとして歪んだけれど、兎丸は気にしない。
いや、ものすごく気にしているのだが、勝ち誇った気分になれるのでそれすら嬉しくなる。
「びっくりさせんなよなスバガキ~!」
「へへ~」
頭をガシガシ撫でられ、それでも引き離される訳じゃない。
羨ましい?羨ましい?と犬飼や他の部員に身体全体で問いながら、兎丸は無邪気に笑う。
自分のことを黒いだの何だのと言う奴がいてもどうでもいい。そういうやり方で猿野の一番そばにいられるのはいつだって、自分だ。
わかっているから。
そういうやり方でないと、そばにいられないって。
(いいんだ、僕は)
猿野の温かい手に包まれて、無邪気に笑いを振りまいてから、目を瞑った。



イノセンス
兎猿
(其れはこれ以上無い純粋さであり無邪気さなのである)



お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
十年後


竹寿司の二階には息子の武の部屋がある。
そこからは並盛の町がよく見渡せた。
窓を開け放しているせいか、風鈴の音がうるさい程に響いている。
山本は窓枠に腰掛けて、じっと手紙を見つめていた。
とっくの昔に読み終わった手紙を何度も何度も読み返し、もう手紙はくたくたによれてしまっている。
読み終えて最初に戻り、また。
『山本へ――』
窓を開けているせいで、夏風が髪に吹き付け風鈴をかき鳴らし、手紙まで読みにくい。
それでも山本は目を細め、途切れず届く律儀な便りを幾度も読み返す。
「ツナ」
大切な人の名を呼んで、また最初へ。
彼の名をかたどる空気すら、彼が自分の中に存在しているのだと教えてくれる。
そう感じ、信じて。



竹寿司の二階には息子の武の部屋がある。
そこからは並盛の町がよく見渡せた。
ただ、海だけはどこにもない。


異国より愛と哀を込めて
山ツナ
(元気?俺は元気じゃありません。なぜって君がいないから!)



お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
栄純3年の夏


「監督」
もう子どもではない。そんな主張を背に纏った子どもは、小さな、けれどしっかりした声で言った。
小さかったのは片岡にだけ聞いてほしかったからだろうが、そんなことをしても無駄に思えた。この子どもは最早片岡だけの子どもではなく、球界全体の宝に成りつつあるのだから。
それでも今日のこの試合までは青道の一選手である栄純は、何も言わずに言葉を待つ片岡に、くすっと笑ったようだった。
「監督。好きでした」
のびやかな声。すっかり変わってしまった声。けれど何も変わらない、変わりようのない声…。
今日が最後の甲子園だから、か?
「何故今、そんなことを言うんだ」
振り返って見た監督の顔は普段通り。けれど少し情けなく見えた。
栄純はとてもとても彼が愛しくなって、笑った。
「だって」
――ピッチャー交代、背番号1、沢村栄純君。
「この試合、俺のことだけ見てくれるって思ったから」
静かな声を叱咤しようと口を開き、閉じ――また開いた片岡はいつも通り、行ってこい沢村、と呟いた。


遅すぎた告白
グラ沢
(そんなことを言わなくてもずっとお前だけだったさ)



お題は「てぃんがぁら」様(Link頁より)
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