どうしようもないネタメモブログ。
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遊郭パラレル(江戸パロとは無関係)
栄純女体化注意
勿論、互いのことは知っていた。
片や清渡来の貿易商、片やこの辺一体を取り仕切る同心である。互いに顔は知らずとも有名な二人であったし、話の種になることも多かった。ただ、別に是と言って接点が無かっただけのこと。
だから顔を合わせるのは是が最初で最後であろうと、どちらからともなく思った。
初対面の二人は、布団を挟んで向かい合う。その布団の主に与えられた部屋は妙な具合に広く、中央で男二人が布団を囲み縮こまっているのも傍目には奇妙だった。
楊は正座を崩さず、仕立ての良い着物に袖を通していた。一目でわかる一張羅だったが、慌てて出て来たのが取れかかった細工物の帯飾りに見て取れる。
彼はゆっくり、布団の少女の額に手を置いた。
「熱い」
存外低い声が響く。当たり前だろうと思われたが、そうやって確認しないと平静を保てないのだと知れた。
真田は出かけ先から走ってきたので、日に焼けた肌に玉の汗を浮かべていた。羽織りの襟口を直し、頭を掻く。胡座をかいているのが彼の動揺なのだろう。職業による座り方というものがこの国にもあろうが、崩れた形でも正座をする同心を楊は知っている。
真田は布団の外に出た少女の手を握る。
「栄」
粗野な同心の意外に柔らかな声が、夏だというのにひんやりした部屋に広がり溶けた。薄い氷のようだった。
布団に横たわっているのは十五、六の少女だった。黒い髪、閉じた瞼の奥には艶やかな黒い双貌がある。本人曰く歳など記憶にない。だから十五、六というのはあくまで見た目による憶測に過ぎない。
少女は顔を赤く蒸気させ、息苦しそうに口の端から息を吐き出した。赤に色づいてすら映る息は、今にも血を吐くように見えた。
少女はいつもの鮮やかな赤い着物を身に付けている。幾ら病で伏せっていたとしても、遊女である彼女は客の前に出る時必ず着飾らなければならなかった。
二人は無理に着飾って迎えた少女を見て唇を噛んだ。けれども白い肌襦袢など着ていたら、死に装束にしか見えなかった筈なのだ。
少女はうっすら目を開けた。半分しか開かない瞼と虚ろな黒い瞳が世界を映す。
二人は少女の顔を覗き込んだ。彼らの姿は二十歳に届こうという大人にしては幼く見えた。
「栄」
「栄純」
名を呼ぶ。大の大人の情けなく震えた声が耳に入って、栄純は笑う。力など殆ど残っていないだろうに、笑顔は相変わらず太陽のようにきらめいた。
小さな唇が震えるように言葉を紡ぐ。
「しゅん、」
「ああ」
「おう」
二人は泣き笑いのように顔を歪めて、愛しい遊女にそれぞれ口づけた。
『真田のお兄ちゃん』
『楊さま』
いつもの呼び名と違うのはきっと誤魔化し等ではなく。
二人を欲したのだと、思いたかった。
終
趣味に走った。後悔はしていないが遊郭パラレルの必要があったかどうかは疑問。←
死にネタではないです、よ!!!
また次の宵に、来て。
栄純女体化注意
勿論、互いのことは知っていた。
片や清渡来の貿易商、片やこの辺一体を取り仕切る同心である。互いに顔は知らずとも有名な二人であったし、話の種になることも多かった。ただ、別に是と言って接点が無かっただけのこと。
だから顔を合わせるのは是が最初で最後であろうと、どちらからともなく思った。
初対面の二人は、布団を挟んで向かい合う。その布団の主に与えられた部屋は妙な具合に広く、中央で男二人が布団を囲み縮こまっているのも傍目には奇妙だった。
楊は正座を崩さず、仕立ての良い着物に袖を通していた。一目でわかる一張羅だったが、慌てて出て来たのが取れかかった細工物の帯飾りに見て取れる。
彼はゆっくり、布団の少女の額に手を置いた。
「熱い」
存外低い声が響く。当たり前だろうと思われたが、そうやって確認しないと平静を保てないのだと知れた。
真田は出かけ先から走ってきたので、日に焼けた肌に玉の汗を浮かべていた。羽織りの襟口を直し、頭を掻く。胡座をかいているのが彼の動揺なのだろう。職業による座り方というものがこの国にもあろうが、崩れた形でも正座をする同心を楊は知っている。
真田は布団の外に出た少女の手を握る。
「栄」
粗野な同心の意外に柔らかな声が、夏だというのにひんやりした部屋に広がり溶けた。薄い氷のようだった。
布団に横たわっているのは十五、六の少女だった。黒い髪、閉じた瞼の奥には艶やかな黒い双貌がある。本人曰く歳など記憶にない。だから十五、六というのはあくまで見た目による憶測に過ぎない。
少女は顔を赤く蒸気させ、息苦しそうに口の端から息を吐き出した。赤に色づいてすら映る息は、今にも血を吐くように見えた。
少女はいつもの鮮やかな赤い着物を身に付けている。幾ら病で伏せっていたとしても、遊女である彼女は客の前に出る時必ず着飾らなければならなかった。
二人は無理に着飾って迎えた少女を見て唇を噛んだ。けれども白い肌襦袢など着ていたら、死に装束にしか見えなかった筈なのだ。
少女はうっすら目を開けた。半分しか開かない瞼と虚ろな黒い瞳が世界を映す。
二人は少女の顔を覗き込んだ。彼らの姿は二十歳に届こうという大人にしては幼く見えた。
「栄」
「栄純」
名を呼ぶ。大の大人の情けなく震えた声が耳に入って、栄純は笑う。力など殆ど残っていないだろうに、笑顔は相変わらず太陽のようにきらめいた。
小さな唇が震えるように言葉を紡ぐ。
「しゅん、」
「ああ」
「おう」
二人は泣き笑いのように顔を歪めて、愛しい遊女にそれぞれ口づけた。
『真田のお兄ちゃん』
『楊さま』
いつもの呼び名と違うのはきっと誤魔化し等ではなく。
二人を欲したのだと、思いたかった。
終
趣味に走った。後悔はしていないが遊郭パラレルの必要があったかどうかは疑問。←
死にネタではないです、よ!!!
また次の宵に、来て。
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