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曲げた腕を後ろへ.足と共に軽く前へ伸ばして,ボールを放る.「投げる」というよりも「放る」といった方が正しいのは,そのボールにマウンドでのような威力がないからだろう.
緩やかに弧を描いて飛んできた白球がグラブに収まる.本当に構えたところにばかりやってくる三橋のボールは,従順であり素直だ.
真似をして投げ返してみるけれど,取る三橋のグラブは動く.簡単にやってみせるからこちらまで出来そうな気分になってしまうが,やはり難しい.この短い距離でも,だ.
三橋の顔はまだ固い.朝一番に見たときより幾分マシのようではある.それでも心配になった.
阿部を筆頭に他の奴らがどう思っているかはともかく,泉はこの不思議な投手に初めから嫌悪感を覚えたことはない.面白いな,と興味を持っているとしても.
けれど三橋は泉と決して目を合わせない.的を見なければ投げられないからチラリと横目で視線をよこすが,その程度だ.同じチームの仲間なんだから,もう少し何とかならないだろうか?
――でも,俺は焦らないし.
返球を握りしめて,泉はまた投げ返した.三橋が三橋らしく,三橋のリズムで野球をすればいい.自分はいつだってそうしてきたのだ.
「三橋」
名前を呼ぶとどうしたってその肩は震えるし,表情は強張ってしまうけれど.
「う,ん」
ときどきこちらをまっすぐ見る瞳は,本物な気がするから.
泉はゆったりボールを投げながら笑う.
新しい野球.新しい仲間.今まで続けてきたものとは決定的に違っていて,でも過去の延長線上に確かに存在している今.
今,三橋に出会えたことには,意味があるはずだ.
「頑張ろーなー」
力を抜きすぎな位に抜いて,安心と元気を引き出したくて笑ってやった.
三橋はボールを受け取ったまま驚いて静止し,ボールを見,泉を見,またボールを見て同じように力を抜いて笑った.
「い,ずみ,くん,」
「ん?」
「ありがっ…,とう!」
しゅぱん.泉のグラブに,まっすぐが届いた.
終
某様への捧げ物のつもりで書いたけどぐだぐだ・・・ボツにしようか検討中。
阿部にキャッチボールしとけって言われたときの二人。三星戦です。
ちょっと待ってて
(ちろろさんリク→甘甘イズミハ・二人で秘密で海にお出かけ&キス)
家出ってどんな気分なんだろう。幼い頃によく思ったことはいつまでも実行されず――特に悩んだ少年時代を送ったわけでなし――、今に至る。
けれど、もしかしたら今の気分に近いのではないかと思う。
駄目だとわかっていても、未来にものすごく怒られてしまうとしても、光の先を見たいという気持ちにただ押し流されてゆくのはとても楽しい。あとゾクゾクする感じ、も少し。
駅の改札を出て、振り返る。そんな心配する方がおかしいのかもしれないが、いかんせん三橋は危なっかしいところがあるから仕方ない。
三橋は案の定ばたばたと切符を探して何とか改札を抜け出るところだった。ああ、切符の管理も俺がするべきだったかな。でもそこまで甘やかすのは、どうなんだろな?
「いず、み、く…」
「ほら、行くぞ」
手を引いてやると、三橋は転びそうになりながらも何とか俺についてくる。
駅の中からも外に広がる光景が見えて、潮の匂いがする。ああ遠くまで来たんだな、となんとはなしに感じた。
ぐいぐい手を引っ張って、駅の出口へ向かう。
「あ、あわ、」
「もうすぐだから」
「ぶ、部活、は、」
「用事あるって、言ってある」
「あぅ、でも、おれ、」
振り返らずに短く返す俺に、三橋はまだぐずぐずと頑張る。
どうせならすぐに流されてしまえばいいのに。
「いいんだ」
やっぱり短く。(でもどこか優しく。)
握った手にこめる力は、心持ち強く。
「俺、お前といっしょにいたいだけなんだから」
赤くなっているだろう顔なんて見せない。
三橋はそれを聞いて一転押し黙ったけれど、手にこめた力はそのままにした。たまに行動的になったりするからこいつは性質が悪い。
駅を出ると爽やかな風が吹いた。すぐそこは砂浜、その延長上に広い海で、視界がぐっと開けた。
季節柄当たり前だが、海水浴客の姿は見えない。寂れたと言ってしまうと元も子もないような気もするが、そんな状態だ。
コンクリートの地面を過ぎ、柔らかい砂に足をつける。靴越しにも足がめり込むのがよくわかった。
ずっとまっすぐ、まっすぐ。海へ向かって、これは入水するつもりに見えるかもしれないとバカなことを考えながら突き進み、波打ち際まで来て、止まる。
振り向いて三橋を見た。これから何が始まるのかわからないためか、部活をずる休みしたことへの罪悪からか、その表情には脅えが混じっている。
ごめん。たぶん、そんな顔させなくてもいい方法が、あったのかもしれないけれど。
みんなのストッパーだとか言われる俺だって、余裕がないときもある。
「三橋」
名前を呼ぶと三橋の視線が俺から揺らいだ。ほんの少しの動きだというのに俺は苛立ってしまって、反射的に手を引き寄せる。三橋の大きな瞳が驚愕に見開かれた。
「うわ」
「三橋」
「…う、ん」
すっぽり俺の腕の中に入れて――抱きしめて、俺は耳元で言う。
「あのな」
「うん」
「誕生日、おめでと」
三橋はさっきよりも目を大きくした。
これは別に、自分の誕生日を忘れていたなんてそんなことではない。事実昨日は休みで、毎年恒例、三橋宅での誕生日会がきちんと開かれた。
だから三橋は不思議に思ったんだろう。それは当り前だし、想定もしていた。
息を大きく吸って、吐く。これからやること・言うことはきっとかなりバカげていて、でも自分では相当本気のことで、と自分自身を納得させながら。
「誕生日だから、もうお前十八歳なんだよ」
「そうだ、ね…?」
「だからさ、ちょっと待ってて」
顔を上へ向かせる。キラキラ、太陽の光が反射して光る三橋の瞳が俺を見る。
目をつぶらないで、そっと顔を近づけて、唇に唇を押しつけた。
三橋は驚いていたけれどすぐに目を閉じる。それは俺が教えたことで、そんなことを思い出すと気恥かくて、俺も目を閉じた。
ざざ、と波が砂を擦る音が響く。他には何も雑音がなくて、世界に二人だけみたいだ。
しばらくそのままで三橋のやわらかい唇を味わって、離れる。
「待つ、の…?」
三橋が不思議そうに、けれど頬を赤くして幸せそうに聞いてくるから、俺も自然と笑みがこぼれた。
「ああ――ちょっとだけ、待ってて」
ぎゅう、と抱きしめて、言わなくてはいけないことを、早く。
俺たちの時間はどうやったって限られている。こんな現実からの短時間逃避行だって、いずれきっとできなくなる。
でも。だから。
今を、すごく大切にしたいから。
「結婚しよう。廉」
「!」
「俺も十八なったら、結婚できる」
そんなこと認められるはずないけど、その約束が少しでも長く、俺らをつないでくれるなら。
いくらだって嘘の約束、ついてやるよ。
「孝介くん…」
「好きだ。愛してる。ずっと、世界で一番」
(そんな言葉何にもならないけどお前が、廉が幸せになってくれるならそれで俺は、)
廉は俺を見て――きっとかなり歪んだかっこわりー俺の顔を見て、悲しそうに微笑んだ。
「うん」
小さな声が肯定して俺を抱きしめる。
普段鈍感なこいつは、俺が駄目なとき、いつだってこうやって、強い。
「おれも」
ざざ、ん。
波が大きく唸りを上げて。
「ずっといっしょにいたい」
「…ん」
「家事…できない、けどっ」
目を瞬かせると、廉は慌てて俺を離した。
「でもっ、こーすけくんのお嫁さん、なら、家事もできるっ、よ!」
両拳を握り締めて一生懸命に言う姿は、誰が何と言おうとこの世で一番愛しい。
俺はかなり間抜けな顔で驚いていたんだろうけど、思わず声を上げて笑ってしまった。
「ふえっ?」
「ははっ……うん…楽しみにしてる」
廉の髪に触れて、くしゃくしゃにかき混ぜる。わ、とか、あわ、とか慌てるこいつは気づいてないんだろう。いつもやっているこの行為が、単なる恥ずかしさの誤魔化しだってことに。
「で、いいのか?」
「うひ?」
「結婚」
「!…うん」
ときどきその場のノリで頷く癖があるから、ちゃんと確かめないといけない。顎を掴んで上向かせると、廉は顔を真っ赤にして目を泳がせた。散々泳いで戻ってきた瞳は潤んでいて、焦っていて余裕がない、そんな俺の顔が映っていた。
「泉廉になるんだけど」
「う、うんっ」
「いーのか?」
「だって、俺、」
そろそろ息継ぎさせなくて大丈夫か心配になってたんだけどさ。
「こーすけくんの、ものなのに、」
つい、また唇を塞いでしまった、
ちょっと待ってて。
俺が、もっとちゃんと、
お前を連れ出せるまで。
終わり
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釈明のお時間↓
・リクをまるっきり無視している。
・ふたりの性格(特に泉様)がおかしい。
・描写がいい加減にもほどがある。
・やはり読み返せない。
・というか書きなおしていいですかちろろさんorz
これ以上の密室ってなくないですか?
(琳野様リク→でろ甘サカミハ)
さ。三橋が言った。
確かに言ったのは「さ」その一文字で、たったそれだけだったのだけれど、何を言いたいかわかって俺は返事する。たぶん、俺の名前を呼ぼうとしたんだ。だよね?
「なに?」
こちらを見上げる三橋は不思議そうな顔をした。不安げ、ともまた違う。純粋に何かを疑問に思っていて、それがわからない、って顔。
ただ、今は三橋の顔が俺から見るとさかさまになっているので、もしかしたら間違えているかもしれない。
反転してもその顔は可愛らしくて、ああ、いいな、と思ってしまう。
三橋は口をぱくぱく金魚のように開け閉めすると、俺の眼前で問うた。
「ど、して、こんな、体勢、なの?」
「うーん。どうしてかな?」
にっこり微笑むと、三橋は頬をかすかに桃色に染めて、ええと、と呟いて。
「だ、誰もいない、か、ら…?」
可でもなく不可でもない答えを言いつつ、目を逸らす。
それは当たっているかもしれない。三橋を好きな奴らは本当に多いし、相当手ごわいから掻い潜るのは至難の業だ。俺は別に部内に波風立てる気もないし、俺、というより三橋が困ったり悩んだりする必要はないと思うわけで。(困ったり悩んだり。ああ、それって恋愛っぽいな。その方がいいのかな?)
それから、ここは鍵をかけた屋上というある意味密室だ。こんな開けた密室、他にはないだろうけど。
けれど、二人きりだから――というのは、根本的なところで違う気もしている。
後ろから三橋の顔を覗き込んで、前髪に口づけた。
「ひゃあ」
驚いて小さく悲鳴を漏らすと、三橋はほう、と息を吐いて身体の力を抜いた。前は逆にかっちんこっちんに固まっていたから、進歩だなー。
「その内、わかるよ」
笑いながら、三橋に言った。
屋上の入口付近の壁に背を預け、三橋はそんな俺の胸に背を預け。三橋の頭がときどき動いて、くすぐったい。
三橋は俺の言葉をやっぱり意味がわからない、とばかりに聞いていたけれど、別に不安がることもなくとりあえず頷いて、絡ませた俺の手を適当に弄んだ。硬い皮膚同士が温度を分け合った。
空を見上げるとところどころに雲が浮かび、ゆっくり、確実に流れてゆく。日差しが心地よくて今にも寝てしまいそう。さすがに恋人といっしょにいるときに寝てしまうのは申し訳ないので、目を強くつぶって眠気を紛らわす。瞬間、三橋が身じろぎするのが伝わってきた。三橋も、眠くなったの、かな――?
けれど、目を開けるとふんわりした光と共に目の前にあったのは可愛い三橋の寝顔ではなくて。
優しく甘く微笑んだ、俺の恋人の顔。
今度は反転していない。身じろいだのは俺と向かい合うように座るためだったみたいだ。三橋が正面から抱きつくような形になっている。
俺の首の後ろに、両手が回される。
「そっ、か」
多分きょとんとしているであろう俺の額に、ちゅ、と可愛らしく口づけた。
「おれ、閉じ込め、られちゃっ、た?」
首を傾げて、綺麗に笑んだままの言葉。
それは問いだったのか、答えだったのかはよくわからない。
でも、とても正しいことを言われたのは本当。
「そうだね――」
正面から華奢な身体を抱きしめると、三橋の顔が視界から消える。
「ゆう、と――?」
今度は間違いなく不安げに、俺の名を呼ぶ声。
「だいじょうぶだよ、廉」
大丈夫、どこにも行かないよ。
だって君の言ったように。
俺は君を、この腕の中、閉じ込めているんだから。
そして、君は俺を、
ずっと、
この愛の中に閉じ込めて、決して放してはくれないんだ。
終
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釈明→
・短時間で書いた即興文のため、いろいろおかしい。
・でろ甘の意味を履き違えている。
・怖くて読み直していない(おま)
・琳野さんごめんなさいorz
出す予定のほん。
「三橋三度!」(ミハサンド!)
あべみはる。…阿部→三橋←榛名
たじみはな。…田島→三橋←花井
かのみはた。…叶→三橋←畠
いずみはま。…泉→三橋←浜田
もう…ハマちゃん忘れてたとか、ほんと死んでこい自分…orz
モモミハ本を出そうと思い立ちました。
相変わらず西浦高校野球部監督なモモカン×西浦を卒業した現在大学生三橋の同棲?同居?話。
モモカンに慣れてちょっと男の子らしくなった三橋を書きたい。あとそんな三橋が可愛くてしょうがないっていう百江監督をば、いっちょ。